



こんな方におすすめ
- 不動産投資をする場合の法令(セーフとアウトの線引き)
- 公務員が不動産事業をはじめる時の手続き(様式)と注意点
- 公務員が不動産事業で懲戒処分となる場合(根拠条文)
- まとめ~不動産のことは知って損なし
公務員に許されている不動産事業の規模とは?
国家公務員法と人事院規則10-8で「公務員に許されている不動産事業の規模」が明確に掲載されています。
承認は不要 | 承認が必要 | |
アパート | 10室未満 | 10室以上 |
駐車場 | 10台未満 | 10台以上 |
独立家屋 | 5棟未満 | 5棟以上 |
ホテルや遊技場 | なし | あり |
売上 | 500万円未満 | 500万以上 |


人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について
(昭和31年8月23日職職―599)
(人事院事務総長発)
二 不動産又は駐車場の賃貸 次のいずれかに該当する場合
(1)不動産の賃貸が次のいずれかに該当する場合
イ 独立家屋の賃貸については、独立家屋の数が5棟以上であること。
ロ 独立家屋以外の建物の賃貸については、貸与することができる独立的に区画された一の部分の数が10室以上であること。
ハ 土地の賃貸については、賃貸契約の件数が10件以上であること。
ニ 賃貸に係る不動産が劇場、映画館、ゴルフ練習場等の娯楽集会、遊技等のための設備を設けたものであること。
ホ 賃貸に係る建物が旅館、ホテル等特定の業務の用に供するものであること。
(2)駐車場の賃貸が次のいずれかに該当する場合
イ 建築物である駐車場又は機械設備を設けた駐車場であること。
ロ 駐車台数が10台以上であること。
(3)不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらを併せて行つている場合には、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額500万円以上である場合
ここに該当する基準以上の不動産事業を行う時は、承認が必要という趣旨です。


職場の承認を得る場合の手続きや様式は?
公務員が大規模な不動産事業を始めた時、承認を得る手続きはどのようにすれば良いのでしょうか。実際の様式はこちらです。

自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)表面

自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)裏面
事例を出しましょう。
はじめて収益物件を購入しようとする公務員Aさん
「中古の一軒家を1軒」を購入して、不動産所得を得る場合には「独立家屋の数が5棟以上」には満たないので、自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)の提出は必要ありません。
すでに駐車場5台分を賃貸している公務員Bさん
追加で8台分の駐車場を購入する場合は「駐車場10台以上」に該当するので、自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)の提出が必要となります。
公務員が「副業で不動産所得を得る」場合の注意点は?
注意点は「公務員の職務に支障がない」ことです。
5 「人事院が定める場合」は、次に掲げる場合とする。
一 不動産又は駐車場の賃貸に係る自営を行う場合で、次に掲げる基準のいずれにも適合すると認められるとき。
(1) 職員の官職と承認に係る不動産又は駐車場の賃貸との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがないこと。
(2) 入居者の募集、賃貸料の集金、不動産の維持管理等の不動産又は駐車場の賃貸に係る管理業務を事業者に委ねること等により職員の職務の遂行に支障が生じないことが明らかであること。
(3) その他公務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないこと。
ポイントをまとめますと・・・。
ココがポイント
利害関係者と賃貸借契約しないこと
実務は、家族や管理会社に委託して、ご自身は本業に専念すること
物件規模が承認必要レベルになったら申請すること
利害関係者については、こちらの記事を参考にしてくださいね。
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【公務員の場合】利害関係者とは?(よくある質問)
利害関係者とは? 研修やパンフレットの説明は見るけれど、実際私の業務に当てはめると、誰のこと?利害関係者の意味、利害関係者の範囲、禁止されている行為、罰則、地方公務員の条例についてなど。元法務省の庶務係長が素朴な疑問に、お答えします。
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不動産事業による懲戒処分は?
承認が必要な大規模の不動産事業を行っていながら、承認手続きを経ていなかった場合は、懲戒処分になります。 「懲戒免職の指針について」(平成12年3月31日付け職職-68人事院事務総長通知)記載の標準例では「減給又は戒告」です。
出典 義務違反防⽌ハンドブック-服務規律の保持のために-P22
まとめ~公務員が不動産のことは知って損なし
公務員ができる副業で明確なセーフとアウトの基準がある不動産事業。物件情報を調べたり、下見をしたり、契約など法律的知識も必要です。物件を買うには多額の資金の必要となります。一般的にはハードルが高いので敬遠される傾向が多いのも事実です。しかし、個人的には、公務員こそ、不動産事業に向いているのでは?と考えています。
公務員だから、行政文書や契約書面に強い
着実に資金を積み立てて、融資も受けやすい
そのうえ、誰しも「家」なしには過ごせませんよね。賃貸にしろ、持ち家にしろ「不動産」と一生関わらずに過ごすことはないでしょう。
今、公務員宿舎に住んでいる方も、いつかはマイホームもしくは賃貸住宅に住まわれる日が来ます。相続で土地や建物を所有する可能性もありませんか?
その時に、物件の見方、税金のこと、賃貸借契約、所有権や抵当権など法律に関する知識があるとないとでは、数百万円から数千万円の違いが出てくるのではないでしょうか。公務員が、不動産事業を始めるか否かにかかわらず、不動産の知識は持っていて損なしと考えています。
もし不動産事業に興味をもたれたら
私自身も収益物件は持っていませんが、金融リテラシーを高めようと、不動産の勉強や情報収集を続けています。
「公務員時代にやっておいた方が良いことはありますか?」「公務員を辞めて後悔はありませんか?」とご質問を受けることがあります。ひとつだけ後悔しているのは「公務員時代に不動産を勉強して、公務員の立場で物件を買い、融資をひいておけばよかった」この1点です。
私と同じく公務員を辞めた後,不動産事業を専業にしている女性と知り合いました。元公務員の彼女は現在、億単位の物件を複数所有し、不動産所得で生計を立てておられます。彼女も同じことを言ってました。「公務員時代に物件を買っておけばよかった」と。彼女も公務員を辞めてから、不動産の勉強したとのこと。公務員に明確にやって良いと認められている不動産所得を得ないというのは、宝くじを買ったのに、当選番号を見ないと同じようなものだと私は考えます。
物件を買うかどうかは別として、まずは不動産の知識を得ておくことは、生涯数百万円~数千万円の違いになると思います。もし、情報収集を始められるのでしたら、初心者に向いているこちらの本がおすすめです。
