公務員の副業に関して、よく話題にのぼるのが資格です。「副業するなら、何か資格があったほうがいいですよね」「○○という資格を取って、副業しようと思うんです」というご相談が、とても多いです。ですが、資格取得に時間と労力をかける前に「ちょっと待って!!!」言いたいです。資格取得が必要かどうか、検討するポイントをお伝えします。
資格取得費用と維持費
あなたが興味ある資格、仕事や試験の内容については、ご存知でしょう。資格取得後の支出について、調べたでしょうか?
資格には、資格保有者団体がある場合が多く、資格を名乗ったり、維持するには、年会費を払い続けなければならないという仕組みがあります。地域によって、会費が違うので、北海道で例を調べました。
- 栄養士会 年会費14000円
- 社会保険労務士 登録免許税3万円、登録手数料3万円、入会金8万円、会費:開業者・年額80,000円、勤務等・年額48,000円
- 行政書士 登録免許税3万円、登録手数料2万5千円、入会金20万円、会費:月額6000円
資格を維持するには、会費を払い続けることになります。たとえば、40歳で資格取得して、70歳まで維持するなら30年。栄養士会の年会費14000円×30年=42万円。勤務の社労士だと年48000円×30年=144万円。行政書士の場合、6000円×12ヶ月×30年=216万円です。
よく「資格は取っても邪魔にならない」と言いますが、とんでもない、車以上に維持費がかかります。資格を発行する側も、ビジネスですから、資格保有者から、会費以外にも、更新手数料・講習代等々、都度お金をが必要になる場合が多いです。上位資格取得を勧められる場合もあります。安易に「資格を取れば副業にも、転職にも有利に違いない」と思って資格を取ると、思わぬ出費につながります。
そして、苦労して取った資格ほど、難関資格を突破する実力の持ち主ほど、資格を手放すのが惜しくなりますから、年会費を払い続けることにもなりかねません。だからこそ、資格取得前に「本当に必要なのか?この資格がなければ、やれないのか?」を考えて頂きたいのです。
名称独占資格と業務独占資格
国家資格の中には、名称独占資格と業務独占資格があります。名称独占資格とは、資格保有者でないと名乗れないもの。たとえば、行政書士ではない人物が「私は行政書士です」と名乗ってはいけません。業務独占資格とは、医師や看護師でない人が、注射をすると、医師法違反と傷害罪で罰せられます。資格を持っている人しか、許されていない行為があり、資格保有者でない人が、その行為をすると罰せられます。
名称独占資格ではなく、業務独占の事柄でなければ、資格がなくても誰でもできます。例えば経営コンサルタント。これは、資格がなくても、中小企業診断士を持っていなくても「私は経営コンサルタントです」と名乗れば仕事ができるわけです。
たとえば、
実務でバリバリ活動している資格保有者のAさん
副業のために資格を取得しただけのBさん
あなたがお客様なら、AさんとBさんどちらを選びますか?実務経験が豊富なAさん、ではないでしょうか。
副業のためだけに、資格を取った場合、あなたがBさんの立場になってしまうのです。同じ資格保有者であっても、実務経験ゆたかなに人に見劣りする自分を感じて、さらに資格を取ろうと考えたり、せっかく資格取得に努力した自分に満足できなくなってしまうのです。
肩書は自分で作る
「名乗れるほどの資格がない」「副業の名刺や、ホームページなんと書いたら良いの?」こんなご質問をよく受けます。肩書は自分で作りましょう!
たとえば、友達の結婚式の発起人や2次会の手伝いを、死ぬほどやってご祝儀貧乏になったという人がいたとします。この方が「結婚式2次会プロデューサー」と名乗って、2次会コンサル業を始めたら、相談したくなりませんか?
これは、実績や体験やストーリーが、説得力や話題性を生むからなのです。
私が実際にお会いした「肩書き」の素敵な方ご紹介します
カラスに魅了され、カラスを毎日観察サポートされ、NPOを立ち上げ、今や行政も研究者からもプロフェッショナルと認められている、中村眞樹子さん。著書「なんでそうなの札幌のカラス」で、いままでより一層、全国的に有名になられました。
育児と介護を15年間同時進行され、両親を看取り、子供たちを独り立ちさせた後「ダブルケア」という言葉に出会い、自分自身が当事者だったことを知り、現在はダブルケア専門家として、相談・啓発に取り組んでおられる野嶋成美さん。
中村さんも、野嶋さんも、資格ではなく、ご自身の体験を「専門家」として看板にされています。しかも、カラス・育児・介護どれも、誰もが知っていることです。とても身近なことから、やりたいことや看板が出来上がっていくのです。
資格取得のメリット
資格は要らない話をしてきましたが、メリットがないわけではありません。
- 出会いと仲間作りの場
- 職場や家庭以外のコミュニティ体験
- 成長している感覚が味わえる
お前は資格たくさん取ってるじゃないか?!と思われた方、そうです!!
失った時間も膨大です。社会人になってから23年のうち、資格取得の勉強をしなかったのは、新卒後の1年と、不妊治療・妊娠・出産に費やした丸7年の計8年のみ。残り15年間は、いつも何らかの資格取得に費やしてしまいました。資格への勉強を続けることで、成長している錯覚に酔っていました。受験勉強に没頭することで、本来考えるべきことを見ないようにして、思考停止させていただけでした。学生時代、心理学部に入りたかったけど、不合格だった過去を、成仏させたくて必死だったという側面もあります。
でも今は、違います。上位資格を取ることをやめました。取得した資格を、キャリアコンサルタントと維持費ゼロ円のものだけ残し、他は全部放棄しました。「お客様にとって、本当にメリットになるもの」は資格ではないと気づいたからです。
資格取得に興味があるなら、ここに注目して考えよう
お金も時間もかかってもいいから、資格が欲しい!!!という方は、ここに注目して資格を厳選しましょう。
step
1資格保有者に、話を聞く
たとえば、中小企業診断士に魅力を感じるなら、現役の中小企業診断士に話を聞きましょう。資格のイメージと実際の働き方が合致しているか、資格取得の費用対効果があるかどうか、インタビューしましょう。誰をサポートして、誰の味方になるのか、誰がお金を出すのかも重要なポイントです。
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2仲間ができるか?
資格のメリットは、人間関係が広がり、相談したり情報交換するネットワークが広がることです。資格取得のプロセスや、資格保有者に、職業・年代・土地などバックグラウンドが違う人と出会い、交流できる場面が設けられているかどうかを確認しましょう。たとえば、養成講座などで、長期間一緒にがんばる仲間ができるなら、投資する価値あり。反対に、資格保有者が、年1回程度「懇親会」する程度なら、異業種交流会やコワーキングスペースに行ったほうが、コスパが良いので、やめましょう。
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3資格を取る前に、できることをやってみる
たとえば、お菓子作りに、パティシエ資格は要らないのです。私の公務員時代の後輩に、チョコレートづくりが得意な男性がいました。毎年、バレンタインデーやクリスマスなど、職場で手作りチョコをふるまってくれました。食べた人から「美味しかった」とお礼のプチギフトが届いたり(報酬)、「作り方教えて」とか「材料費払うからたくさん作って」など、オファー(次へのヒント)も増えていました。これが、副業に成長するのです。パティシエ資格を取るよりも、友人や同僚に食べてもらい、実績やフィードバックをもらうほうが、だんぜん近道なのです。
公務員の「信用」があれば資格不要
資格が示すものは「信用」です。資格を取る「努力家」であることや、資格があるから「信用できますよ」というサインです。「公務員」という職業そのものが、公務員試験を突破した「努力家である」ことを示していますし、着実で堅実であるという信用と実務能力を証明しているので、公務員が改めて別な資格をとって「信用」を示す必要はないのです。
まとめ:資格取得を考える前に、リサーチしよう!!