保護観察とは?
保護観察とは、犯罪をした人や非行少年が、再犯しないよう、国が作った仕組みです。犯罪加害者が更生するためのサポート的役割と、犯罪加害者が勝手な行動をしないよう制限を加えて、一般の方など社会を守るという、2つの役割があります。
法務省が担当官庁です。
保護観察を受けるのは、どんな人?
保護観察を受けるのは、犯罪をした人や非行少年です。
保護観察の守備範囲は広く、保護観察の種類もたくさんあります。
交通違反をした少年のための交通指導に特化した保護観察や、少年鑑別所から出て保護観察になる人もいます。少年院から仮退院中も保護観察。刑務所から仮釈放されている間も、保護観察。無期懲役も仮釈放があり、死ぬまで保護観察を受けます。 年齢も12歳から上限なく、100歳でも保護観察を受けている人がいます。
保護観察の期間はいつまで?
保護観察の期間は、法律によって決まっており、人によって違います。保護観察のカードに書いてある日時が一番正確です。
未成年:家庭裁判所で審判を受けた場合
18歳未満→20歳になる前日
18歳以上→家庭裁判所の審判から2年間
成人の場合:保護観察付き執行猶予と仮釈放
成人の場合は「裁判官が決めた時期まで」です。
保護観察付き執行猶予→執行猶予期間中ずっと(3年~5年)
仮釈放中→刑期満了日まで(懲役○年の最後の日まで)
保護観察所
保護観察が始まる時は 管轄の保護観察所に出頭して初回面接を受けます。 保護観察所は 県庁所在地にあります。例外として、北海道は広いので、札幌・旭川・函館・釧路の4箇所にあります。広い都道府県の場合、県庁所在地のほか、出張所(駐在官事務所)もあります。どこの保護観察所が担当かは、保護観察を受ける人の住所によって、法律で決まります。
保護観察官と保護司の違い
保護観察が始まると、担当の保護観察官と保護司が決まります。
保護観察官は、法務省の職員で、全国に千数百人おり、国家公務員です。
保護司は法務大臣から委嘱を受けた、無給のボランティアで、全国に約5万人います。
保護観察官も保護司も、守秘義務があり、面接で話した内容は外部に漏らさないことが義務付けられています。
保護観察官や保護司の面接を受ける回数や、講座を受ける場合は、日時や回数が指定されます。人によって違うので、初回面接での説明を聞き、分からないことは 担当の保護観察官に聞くのが一番正確です。
保護観察中の仕事は?結婚は?旅行は?
保護観察中であっても、仕事も、結婚も、旅行もできます。
ただし、保護観察中は「生活状況を報告する義務」があるので、仕事の内容や勤務先、結婚する場合は時期や相手などを、前もって保護観察官や保護司に伝える必要があります。
遵守事項とは?
保護観察中の約束事は、遵守事項(じゅんしゅじこう)と呼ばれ、5~10項目ほど、保護観察が始まる時に、書面で渡されます。
遵守事項は2種類
保護観察中の人全員に共通して定められる「一般遵守事項(いっぱんじゅんしゅじこう)」と犯罪傾向に応じてオーダーメイドで定められる「特別遵守事項(とくべつじゅんしゅじこう)」
一般遵守事項は、更生保護法第50条で定められています。
一 再び犯罪をすることがないよう、又は非行をなくすよう健全な生活態度を保持すること。
二 次に掲げる事項を守り、保護観察官及び保護司による指導監督を誠実に受けること。
イ 保護観察官又は保護司の呼出し又は訪問を受けたときは、これに応じ、面接を受けること。
ロ 保護観察官又は保護司から、労働又は通学の状況、収入又は支出の状況、家庭環境、交友関係その他の生活の実態を示す事実であって指導監督を行うため把握すべきものを明らかにするよう求められたときは、これに応じ、その事実を申告し、又はこれに関する資料を提示すること。
三 保護観察に付されたときは、速やかに、住居を定め、その地を管轄する保護観察所の長にその届出をすること(中略)。
四 前号の届出に係る住居(中略)に居住すること(後略)。
五 転居又は七日以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の長の許可を受けること。
保護観察中の出張は注意!
保護観察中に、 引っ越しをしたり、6泊7日以上の外泊をするときは、事前に保護観察所長の「許可証」をもらわないと行けません。6泊7日以上の外泊は、レジャーの旅行だけでなく、出張や出稼ぎなど仕事の外泊も含まれます。許可証が出るまで時間がかかるので、早め早めに「許可申請書」を提出することが必要です。
出張も出稼ぎも、許可証をもらったら、できます。
保護観察中の海外旅行は難しい!
国内旅行も厳しいですが、保護観察中の海外旅行はさらに厳しいです。
保護観察中の海外旅行は、不可能ではありませんが、出国に際して、法務省と外務省の2箇所の許可が必要です。かりに出国できたとしても、渡航先の外国が入国を許可してくれるかどうかは、分かりません。
詳しく説明しますと、外務省にパスポートを申請する際は「あなたは保護観察中か?」という項目があります。正直にYESのチェックを入れると、パスポートが交付されない場合や、渡航先の外国で入国できない場合があります。
旅行がしたいからと、嘘をついて、パスポートを申請時に保護観察中にチェックをしないと、旅券法違反で再犯となり、さらに重い処分が科せられます。
保護観察の面接に行かないとどうなる?
よく聞かれるのが「面接に行かなかったら、どうなりますか?」です。
面接に行かないことは、先ほど挙げた一般遵守事項(更生保護法第50条第2項イ)に反します。
遵守事項をやぶった場合
遵守事項を守っていると?
面接に毎回きちんと行き、他の約束事も守っていたら、良いことがあります。特に未成年の保護観察は「解除」や「退院」という元々決められた時期よりも、早く保護観察を終われる制度があるので、もらえるように頑張りましょう。
仮釈放の場合、早く終わることはありませんが(刑務所生活をがんばったご褒美が仮釈放ですから、それ以上は短くなりません)、保護観察付き執行猶予の場合「仮解除(かりかいじょ)」という、保護観察の面接回数や頻度が軽くなる制度もあります。数パーセントという狭き門ですが、がんばれば認められる制度があるのです。
保護観察は、約束事(遵守事項)を守っていると、自分に有利になります。約束事(遵守事項)を破ると、自分が不利になります。シンプルにそれだけです。
犯罪は、法律という社会のルールを破ることです。ルールを破ると、人に迷惑を掛けるだけでなく、自分に不利であり、ルールを守ると自分が有利になる、という社会の縮図を体感できる仕組みなのです。
保護観察中は、仕事してもいいの?
保護観察中も、仕事できます。出張も、出稼ぎも、許可証をもらったら、できます。出張先や、出稼ぎ中も面接を受けることができます。
この記事を書いた人
元保護観察官:安彦和美
16年間法務省に所属し、刑務所出所者・ご家族・雇用主様との面談や家庭訪問を、年平均500回で行い、延べ5000回以上の相談歴があります。退官し、国家資格キャリアコンサルタントとして独立しました。
※保護観察中の方の個別のご相談は、受け付けておりません。所管の保護観察所で、担当の保護観察官と保護司にご相談ください。
※執筆案件は現在多忙のため、お引き受けできません。この記事のリンクを引用いただけましたら幸いです。