公務員からコーチ・キャリアコンサルタントとして独立した私に、こんなご質問がたくさん寄せられますので、公務員から独立起業する準備のポイントをお伝えします。
- 私は法務省に16年勤務し、44歳で退職
- コーチングで独立起業して2年目の個人事業主
- 高齢出産で2児の母、教育費の山はこれから
- 借金はないが、マイホームもない、賃貸暮らし
- 夫も結構自由な人で、子供が産まれてからも5回、無計画な転職をしている
- 公務員在職中は、私が世帯主で大黒柱だった
こんな私です。公務員を辞めるのは無鉄砲だと自分でも思いました(笑)そのぶん独立起業するため、かなり準備を行ってきました。公務員在職中でも、懲戒処分にならずにできる起業独立の準備について、お伝えします。
公務員と、起業独立と、何が違うのか?
公務員と起業独立した場合と、最も違うことは何でしょうか?それは3つ。
1.商品をつくる
2. お客様と出会う
3.お金をいただく
この3点だけです。この準備こそが、独立起業の柱となります。
プラスアルファで
4. 収入が生じるタイミング
です。
- 公務員→働いた当月から給与を受け取れる
- 独立起業→はじめに事業経費を出す(支出が先)、数ヶ月~数年で回収する(収入が後)
というのが大きな違いです。独立起業の場合は、初期投資の回収までに、タイムラグが長いのです。
たとえば、公務員の場合は、4月1日に採用されたら、4月中に給与を受け取ることができます。
独立起業の場合は、どんな職種であっても
- 初期投資(赤字)→軌道に乗ったらトントン→さらに儲けを出す→自分の収入が得られる
ここまで短くとも数ヶ月、ながければ数年かかります。ですので、初期投資の軍資金と生活費を確保しておく必要があります 。
そのうえで、もしも独立起業がうまくいかなかった場合のリスクプランを立てておきます。100%うまくいく事業はありません(それが分かればノーベル賞です!)なので、うまく行かなかった場合どうするのかをあらかじめ考えておきます。
ここまでのポイントをまとめます。
公務員から起業独立するために、在職中から準備できること5つは、
- 商品をつくる
- お客様と出会う(集客)
- お金をいただく(経理)
- 軍資金と生活費
- リスクプラン
この5つです。一つ一つ、詳しくみていきましょう。
公務員から起業独立準備【ステップ1】商品をつくる
この記事をご覧になってる方は「1.商品を作る」部分は、すでに手がけておられるのではないでしょうか。例えば資格を取り、今まで学んだ専門知識や経験を活かしていきたいというビジョンを持ちのはずです。
商品作り~企画する
資格や専門知識を「だれに」「どのように」渡すのか、を考えること、これが商品づくりです。
例えばコーチングの場合、就活生向け、新社会人向け、婚活コーチ、子育てコーチ、など、年代やライフステージなどで、商品づくりが違ってきます。どのように渡すのか。オンラインなのかリアルなのか、リアルでも相談室を作るのか作らないのかという選択肢があります。
提供方法は、マンツーマンか、グループか。オプションとして、メールフォローの有無、講座の有無。セルフコーチングできるプログラムを作って物販したり、コーチングスキルを身に着けたい人向けに書籍でノウハウを提供したりすることも出来ます。
商品作り~テストマーケティングする
あなたの思い描く「商品」ができたら、在職中こそ、モニター募集して、テストマーケティングをどんどんやりましょう。
ポイントは「実際にやってみる」です。ビジネスのアイデアって「こんなのあったらいいな!売れるな~」って思うのと、実際にやってみるのとは、良くも悪くも全然違う結果が出ます。とくにビジネスの初心者ならなおさらです。
- 良いと思ったのに、全然ニーズがなかった
- 手応えは良かったが、採算が合わない
- ノーマークだった部分が、意外と人気商品だった
- やってみたら、自分に違和感があった
こういうことが、多々あります。10回テストして1回当たれば儲けものです。セブンイレブンの新商品でも、ヒットして、定番商品になるのは、1割未満と言われています。新商品として店頭に並ぶまでの開発段階から考えると、定番商品になるには、0.1%未満なのです。
なので準備段階は「こんなこと、やってみたい」を無料で(もしくは原価だけで)どんどん提供して「テストマーケティング」してください。ご自身の経験値を上げてください。
「ボランティアかよ~」ってガッカリされましたか。むしろ、公務員という「ベーシックインカム」がある在職中こそ、無償で、様々なチャレンジができ、準備ができるのです。そのうえ、お金ではなく、お金では買えない、この3つをもらってください。これが独立起業後の宝になります。
- 実績をつくる(実績◎人、◎時間を表示できると信頼性アップ)
- お客様の声をいただく
- 連絡先を頂く(メールアドレスなど)
コーチングだけではなく、占星術でも、アロママッサージでも、同じです。サイトに掲載するような褒め言葉を沢山いただきます。無料なので、お客様は喜んで協力してくださいます。
あなたが提供した商品によって、お客様がどんな変化を得られたのかを聞いてください。
「こんな商品がほしい」とか「こんなこと知りたい」というリクエストが寄せられます。
これが、今後の商品作りに役立ちます。アンケートや、インタビューで、お客様の声をどんどん拾ってください。
言わずもがな、オフタイムに、無料で商品提供する分には、完全ボランティアですから、公務員倫理や法令には一切反しません。
マーケティングには「返報性の法則」があります。あなたに無料で価値をたくさん提供されたお客様は、必ずあなたに「お返ししなくては」と借りをもたれます。そして、あなたの応援団になってくださいます。目先の小銭ではなく、生涯お客様としてお付き合い頂く「最初の一歩」と考えてください。
これをマーケティング用語で「ライフタイムバリュー」といいます。略してLTVです。無料でサービス受けて、良かったと思ってくださったら、今後、必要な時に「また頼みたい」って来てくださいます。その時のために、連絡先を頂いておくのです。メルマガや、LINE@などが、そのツールとなります。(この準備の話もあとから詳しくします)
公務員から起業独立準備【ステップ2】お客様にお渡しする(集客)
お客様に、あなたの存在やあなたの商品を知っていただくことを「集客」といいます。
「お客様との出会いの場所」です。どこを考えておられますか?
リアルとインターネットに2分されます。ここでは、
(1)リアル店舗を構える
(2)リアル店舗を作らない
この2つのパターンに分けて考えます。
(1)リアル店舗を構える予定の方
飲食店経営、リアル相談室をもつコンサルタント、エステやマッサージなど「専門の場所」を構える予定の方は、店舗の準備が第一です。店舗の準備は、このような順序で進めます。
- 場所探し
- 物件探し
- 契約
- 内装
- ポータルサイト登録(Google マイビジネスや食べログ、ホットペッパーなど)
店舗が決まったら、名刺やチラシなど印刷物も用意できます。ポータルサイト登録もできます。SNSや公式サイトなども準備を進めます。
(2)店舗をつくらないビジネス
オンラインでサービスを提供する方や、訪問、出張型でサービスを提供する場合です。店舗を持たずに物販をする方法もあります(アマゾンや楽天で店舗を構える)。
この場合は、リアル店舗がないので、インターネット上でのお店(公式サイトや出店者サイト)を立ち上げる必要があります。
コーチングやキャリアコンサルタントなど、お客様がご覧になる公式サイトは、無料ブログではなく、ワードプレスで立ち上げてください。今後のアクセスアップのためと、信頼性構築のためです。サイトは立ち上げてから、検索エンジンに表示されたり、アクセス数をアップするのに、最低数か月はかかりますので、在職中からしっかり準備しましょう(ここが最重要)。
総務省が出している公務員がSNSを私的利用する際のガイドラインを参照して、行いましょう。
- 勤務時間内にはやらない
- 公序良俗に反することはしない
- 在職中に有料で継続的な募集を行わない
などを守れば大丈夫です。
公務員から起業独立準備【ステップ3】お金をいただく(経理)
独立起業して、個人事業主もしくは法人を立ち上げる際も、「お金にまつわる知識と処理」が必ず最低限必要になります。
公務員在職中にできる準備としては
- かかった経費の領収書を、失くさずに保管しておく
- 出入金の履歴を残しておく
この2点です。
独立準備にかかったお金は「経費」となり、今後の確定申告や帳簿処理に必要となります。通帳の履歴やクレジットカードの明細、レシートや領収書を保管しておきましょう。
「経費」とは例えば、
- 家賃、水道光熱費、スマホ通信料、PCソフト料金
- 電車バスなどの交通費、車のガソリン代
- 文房具代、コピー代、FAX代、プリンタインク代金
- サイト作成のレンタルサーバー代、WordPress の有料テーマ代
- 書籍購入代金や、勉強会や情報交換会の参加費
- 資格の更新料や受験費用、起業コンサル等に払ったお金など
開業にかかる部分は、経費として計上できます。
経理の費目は、国税庁で詳細を定められています。個人事業主になった場合は、白色申告または青色申告で、確定申告を行います。その費目をお伝えします。全部を記憶する必要はないですが、イメージが湧くと思います。
ポイント
給料賃金~給料、賃金、退職金、食事や被服などの現物給与
外注工賃~修理加工などで外部に注文して支払った場合の加工費など
減価償却費~建物、機械、船舶、車両、器具備品などの償却費
地代家賃~店舗、工場、倉庫等の敷地の地代や店舗、工場、倉庫等を借りている場合の家賃など
租税公課~事業税、固定資産税、自 動車税、不動産取得税、登録免許税、印紙税などの税金
荷造運賃~販売商品の包装材料費、荷造りのための費用、運賃
水道光熱費~水道料、電気代、ガス代、プロパンガスや灯油などの購入費
旅費交通費~電車賃、バス代、タクシー代、宿泊代
通信費~電話料、切手代、電報料
広告宣伝費~新聞や雑誌の広告費用、チラシ費用、カレンダーや手ぬぐいなどグッズ、陳列装飾費用
接待交際費~取引先などを接待する茶菓飲食代、取引先などに対する中元、歳暮の費用
損害保険料~火災保険料、自動車の損害保険料
消耗品費~文房具、用紙などの消耗品購入費、使用可能期間が 1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費
雑 費~他の経費に当てはまらない経費
※出典「帳簿の記帳のしかた~事業所得者用~(税務署発行)」P29
実際の経理の処理の仕方は、
- 開業届を出した税務署での無料説明会
- 地元商工会での帳簿の付け方講習
- よろず支援拠点(中小企業庁系列の公的な窓口)
などで無料or安価に学べます。
その他、自治体での創業塾などもあります。(地方自治体ご勤務の方は、ご自身の自治体主催の行事には出席しにくいかと思いますので ,税務署や商工会・よろず支援などを利用しましょう。
もっと身近なところで、親族や友人に経営者がいる場合は「どうやって帳簿つけてるの」と聞くと、実際の経費処理について知ることができます。「エクセルで記入して印刷して保管している」自力処理派もいれば、専用ソフトの弥生やFreeeを使っているオンラインソフト派もいれば、「経理は苦手だから税理士さんに全部委託」しているなど千差万別です。
公務員から起業独立準備【ステップ4】軍資金と生活費を用意する
サラリーマンと経営者が最も違うことは「お金を得るタイミング」です。
- 公務員~働いた当月に、給料をもらうことができます
- 経営者~先に事業への投資を行い、数ヶ月から数年かけて回収します
起業独立後のステップアップは、このような進み方となります。
ステージ1【赤字時代】事業への投資を行う、収入少ない
ステージ2【トントン時代】事業の認知度があがり、お客様が増え、収入増える
ステージ3【黒字時代】事業が軌道に乗り、収入増える
ステージ1~2は、公務員時代より、収入が減ります。事業への投資も必要です。この期間の生活費を準備しておくことがとても大切です。
無収入生存月数を計算しましょう
あなたの事業が軌道に乗るまでの間、無収入になった場合、何ヶ月もしくは何年生活できるのか?計算してみることが大切です。
独身Aさん
貯金 500万円
生活費 30万円/月
500万円÷30万円=16.6万円
無収入生存月数=16ヶ月=1年4ヶ月
共働きBさん
貯金800万円
生活費45万円
配偶者の収入 月15万円
800万円÷(45万円-15万円)=26.6ヶ月
無収入生存月数=26ヶ月=2年2ヶ月
事業を始めてから、いつどのぐらい 収入が得られるかは予測不可能です。しかし、自分の生活費を計算しコントロールすることは、とっても簡単です。
無収入生存月数が何ヶ月~何年かによって、事業にかけられる費用も、初期投資がどのくらいできるかも、決まってきます。多いか少ないかではなく、リミットを決める意味でも、シュミレーションしましょう。無収入生存月が長ければ長いほど、精神的に安定しますし、ビジネスの立ち上げに専念することができます。
「公務員の退職金を軍資金に」と考えられている場合は、この記事も参考にしてください。
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元国家公務員の庶務係長執筆~私の退職金はいくら?自分で計算できる方法
私が現役の国家公務員だった時、退職金計算事務を担当していました。退職金の計算方法、支給日、雇用保険との関係など、退職手当に関する事項を整理しました。
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公務員から起業独立準備【ステップ5】リスクプランを用意する
独立起業がうまくいかなかった場合のことも、しっかり想定しておきましょう。
「独立起業がうまくいくように最大限努力する」ことはもちろんですが、うまくいかなかった場合のプランも考えておくことで、メンタルが安定します。撤退ラインも見極められます。一番、危険なこと「撤退戦略なく、泥沼状態になること」です。ギャンブルでいう「降りる」ところを決めておくことなのです。
<市場価値を知る>
40代、地方在住の子持ち女性が応募できる、ハローワークでの求人情報や、近所の求人募集の張り紙などは、注目しています。もし、私が再就職する際には、どの程度の待遇が得られるのか、市場価値を見ているのです。
<応募職種を広げる>
今までの経歴にとらわれず、幅広く可能性を考えています。運転免許を持ってますので、配送関係の仕事ならば人材募集は多いなとか。新聞配達なら近所で通勤時間がなく、個人事業主を続けながら、一定収入が得られるなとか。今までのサイト運営や起業独立の経験から it 系の企業に応募することも視野に入れています。コーチングなどマンツーマンの話術と人間関係構築力から営業系の職種に挑戦することも検討しています。キャリアコンサルタントとして、勤め人の求人も定期的に調べています。
<撤退ライン>
公務員を退職する際「3年だけ挑戦させてほしい」と、夫に頼みました。その結果で、撤退や方向転換を検討することにしています。
- 個人事業主として3年挑戦して、黒字化できなければ、再就職する
- 家族の総資産額が◎◎円以下で、右肩下がりなら、再就職する
- 起業とパートタイマーとを掛け持ちすることも検討する
四半期ごとに経営状況を、毎月の家計状況を夫と共有しています。
公務員から起業独立準備【まとめ】
ここまで、公務員から起業独立準備する5つのステップをご紹介しました。
- 商品をつくる
- お客様と出会う(集客)
- お金をいただく(経理)
- 軍資金と生活費
- リスクプラン
いかがでしたでしょうか。
公務員から起業独立の準備をすすめるうえで、迷うこと、困ったこと、分からないこと、色々出てくると思います。いちばん重要なことは「相談する相手」です。相談するのは「経営者」にしましょう。会社員や公務員など、給与所得者(サラリーマン)に相談してはいけません。なぜなら、経営の経験がないからです。
相談相手は、八百屋さんでも、美容師さんでも、農家さんでも、オーナーパティシエでも良いです。独立した中小企業診断士、社会保険労務士、建築士、デザイナー、ライター、ブロガー、大家さん、どんな業種でも結構です。「個人で稼ぐ」もしくは「会社を経営している」人を選びましょう。
ご親族や友人に経営者いらっしゃいませんか?ぜひ話をしてみましょう。
おられなければ「よろず支援拠点」「地元のコワーキングスペース」「商工会議所が主催する研修や情報交換会」など経営者やフリーランスが集まる場所はあります。年休や休日をどんどん使って、サラリーマンじゃない人との時間を過ごすことをお勧めします。
すると知らず知らずのうちに、経営者マインドが身につき、経営者が何を見てるのか、どんな生活をしていて、どうやって収益を上げ、どうやって集客をしているのかなどが、自然と見えてきます。
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